サバティカル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

サバティカル: Sabbatical)とは、使途に制限がない職務を離れた長期休暇のこと。

概要[編集]

長期間勤続者に対して付与され、少なくとも1か月以上、長い場合は数年間となることもある。6日間働いた後、7日目は安息日とする旧約聖書ラテン語 "sabbaticus" (安息日)に由来する。

伝統的には大学教員に多く採られている制度であって、研究休暇在外研究などの呼称もある。研究者、カトリックの聖職者やプロテスタント系の牧師、小説家、漫画家、音楽家、スポーツ選手などがしばしばサバティカルを使い、長期研究調査や執筆などの目標達成、あるいは休息する充電期間として用いる。

ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の理念などを踏まえ、ヨーロッパを中心に企業でも取り入れるところが出てきている。例えばイギリスでは20%の企業にキャリア・ブレーク英語版制度があり、10%がその導入を検討しているとした調査結果もある。日本企業での導入例はまだ少ないが(日本での導入例としてはヤフー[3]全日本空輸[4]などがある)、大学では「サバティカル研修」の名称で教員に対して本来の職場を離れての研究を認める規程を設ける例が増えている[5]

また企業の機密情報保護という観点から、欧米圏では特にエグゼクティブの転職の際に、旧在籍企業が一定の給与を保証した上で強制的に長期休暇を取らせることがある(これにより、企業側は休暇の間に情報漏れ対策の時間を稼ぐことができる[6])。この場合は「庭いじりぐらいしかやることがない」という揶揄も含めて、特にガーデニング休暇: Gardening Leave)とも俗称される[7][8]

スポーツ選手[編集]

スポーツ選手でも、ラグビーなど一部のスポーツにおいて「自国の代表クラスの選手について、1年程度の期間リフレッシュを兼ねて国外でのプレーを認める」制度を設けているケースがあり、そのような制度に対して「サバティカル」の名称が用いられる[9][10][11]

ラグビーニュージーランド代表[編集]

ワールドラグビーラグビーユニオン)において、ニュージーランドラグビー協会独自の規定がある。それは、「海外チームでプレーする選手は、ニュージーランド代表(オールブラックス)の資格を持てない」というもの[12][13][14][15]

その例外規定として「サバティカル」がある。ニュージーランド代表選手は1年間の休暇を利用して、海外でプレーをすることができ、季節が半年ずれている日本など北半球のチームで、多くの現役ニュージーランド代表選手が活躍している[16][17][18][19]

このため、現役ニュージーランド代表資格を持つ選手のジャパンラグビーリーグワンへの在籍は1シーズンのみとなり、2シーズン以上在籍の場合は国代表を退いた選手となる[20]

脚注[編集]

  1. ^ 野田進「「休暇」概念の法的意義と休暇政策─「休暇として」休むということ」『日本労働研究雑誌』第625巻、労働政策研究・研修機構、2012年8月、NAID 40019394013 
  2. ^ 神吉知郁子「休日と休暇・休業」『日本労働研究雑誌』第657巻、労働政策研究・研修機構、2015年4月。 
  3. ^ Yahoo! JAPAN、最長3ヶ月の長期休暇を取得できる「サバティカル制度」の導入を開始 - ヤフー・2013年11月1日
  4. ^ 全日空が「サバティカル休暇制度」導入 4月から無給休職、最長で2年可能に - SankeiBiz・2021年1月26日
  5. ^ 例として東京大学教員のサバティカル研修に関する規程など。
  6. ^ ゴールドマンが厚遇の働くママ、メリルは休暇拒否-コーハン - Bloomberg・2014年3月5日
  7. ^ ガスコイン・ルノーTDが"ガーデニング休暇" - 東京中日スポーツ・2003年9月25日
  8. ^ レッドブル、悪夢の自滅(4/4) - OCNスポーツ・2010年10月24日
  9. ^ スーパースターたちがなぜ続々と来日?日本でラグビーをする貴重な価値 - Web Sportiva・2020年7月13日
  10. ^ 大物外国人、ラグビーリーグワンに続々参戦 様々な意見飛び交う「サバティカル」の功罪”. 2024年5月14日閲覧。
  11. ^ 「NZに戻った時のコンディションが大事」。オールブラックスのロバートソンHC、代表資格基準には触れず - ラグビーリパブリック” (2024年3月18日). 2024年5月14日閲覧。
  12. ^ スーパースターたちがなぜ続々と来日?日本でラグビーをする貴重な価値 (3ページ目)”. 集英社 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva (2020年7月13日). 2024年3月17日閲覧。
  13. ^ オールブラックス指揮官ロバートソン、代表資格議論に本音見えず。【ラグビー旬な一問一答】(向風見也) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2024年3月17日閲覧。
  14. ^ “All Black Savea to take Japan sabbatical in 2024” (英語). Reuters. (2022年10月17日). https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2RC0AP/ 2024年3月17日閲覧。 
  15. ^ Newboult, Colin (2023年11月5日). “NZR address ‘not perfect’ sabbatical system which saw Sam Cane depart” (英語). PlanetRugby. 2024年3月17日閲覧。
  16. ^ スーパースターたちがなぜ続々と来日?日本でラグビーをする貴重な価値 (3ページ目)”. 集英社 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva (2020年7月13日). 2024年3月17日閲覧。
  17. ^ オールブラックス指揮官ロバートソン、代表資格議論に本音見えず。【ラグビー旬な一問一答】(向風見也) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2024年3月17日閲覧。
  18. ^ “All Black Savea to take Japan sabbatical in 2024” (英語). Reuters. (2022年10月17日). https://jp.reuters.com/article/idUSKBN2RC0AP/ 2024年3月17日閲覧。 
  19. ^ Newboult, Colin (2023年11月5日). “NZR address ‘not perfect’ sabbatical system which saw Sam Cane depart” (英語). PlanetRugby. 2024年3月17日閲覧。
  20. ^ オールブラックス主将のサム・ケインが2024年の活動を最後に代表引退。東京サントリーサンゴリアスと新たに3年契約を結ぶ。 - ラグビーリパブリック” (2024年5月13日). 2024年5月18日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]